インフルエンザ脳症とは?
お薬とお付き合いのある皆さん、こんにちは!
今回はインフルエンザで一番怖い合併症「インフルエンザ脳症」についてお伝えしようと思います。
インフルエンザ脳症という言葉は聞いたことがある方は多いと思います。
しかし、対応の仕方だったり、注意点だったりはあまり知られていないのではないでしょうか?
特に、小さなお子さんをお持ちの方でしたら、特に不安は大きいんじゃないかと思います。
今回は、その辺りについてご紹介していきたいと思います!
<今回の内容>
・初期対応について
・神経症状について
初期対応について
† 単純型とは
①持続時間が 15 分以内
②繰り返しのないもの
③左右対称のけいれん ただし、けいれんに異常言動・行動が合併する場合には単純型でもすぐに受診が必要。
‡ 複雑型とは
単純型以外のもの インフルエンザに伴う複雑型熱性けいれんについては、脳症との鑑別はしばしば困難なことがある。
経過観察
ここでいう経過観察とは、その時点では脳症のリスクが低いと思われる場合です。 帰宅後に神経症状の再燃あるいは新しい症状が出現した場合は、必ず再診するようにしてください。 3~5 日後にけいれんや意識障害が出現することもあります。
以上は、「インフルエンザ脳症ガイドライン」に記載されている内容です。
インフルエンザと診断されて、「けいれん」「意識障害」「異常行動」のいずれかが発現した場合は、要注意という事です!
神経症状
インフルエンザ関連脳症の主な神経症状としては、意識障害、けいれん、異常言動・行動があげられます。
意識障害
「意識障害」はインフルエンザ脳症の神経症状の中で最も重要です。インフルエンザになった時に、明らかな意識障害が見られる場合は、速やかに病院へ受診しましょう。
では、「意識障害」をどのように判断すればいいのでしょうか?
一番有名な指標としては、「Japan Coma Scale」というのがあります。
Ⅲ 刺激をしても覚醒しない状態
300 痛い刺激にまったく反応しない
200 痛い激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
100 痛い刺激に対し、払いのけるような動作をする
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態
30 痛い刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、辛うじて開眼する
20 大きな声または体をゆさぶることにより開眼する
10 普通の呼びかけで容易に開眼する
Ⅰ 刺激しないでも覚醒している状態
3 自分の名前、生年月日がいえない
2 見当識障害がある
1 意識清明とはいえない
乳幼児の場合は、以上の指標と同じなのですが、
Ⅲ 刺激をしても覚醒しない状態
300 痛み刺激にまったく反応しない
200 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
100 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
Ⅱ 刺激すると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
30 呼びかけを繰り返すと、辛うじて開眼する
20 呼びかけると開眼して目を向ける
10 飲み物を見せると飲もうとする。あるいは乳首を見せれば欲しがって吸う
Ⅰ 刺激しないでも覚醒している状態
3 母親と視線が合わない
2 あやしても笑わないが、視線は合う
1 あやすと笑う。ただし不十分で、声を出して笑わない
以上のように、医療機関では判断するようです。
私は薬剤師ですので、診断はできませんが、不安な場合は以上の判断基準に当てはまるような事があれば、診察をしたほうが良いのかなと思っています。
けいれん
インフルエンザになっている時にけいれんを認めた場合、それは、本質的には熱性けいれんとは異なり、最も注意すべきはけいれん後の意識障害です。意識障害については前項を参照していただければと思います。
単純型
①持続時間が 15分以内
②繰り返しのないもの
③左右対称のけいれん
以上を指します。
複雑型
単純型以外のけいれん(持続時間の長いけいれん、繰り返すけいれん、左右非対称のけいれんなど) を指します。
以上、けいれんが起こった場合は、速やかに受診したほうが安心でしょう!
異常言動・行動
インフルエンザ脳症の初期には異常言動・行動がしばしば認められます。
しかし異常行動・言動が必ずしも「インフルエンザ脳症」と言うわけではなく、熱せん妄、脳症へ進展しない異常言動・行動もあります。
インフルエンザに伴い異常言動・行動が認められた場合
①連続ないし断続的に概ね1時間以上続くもの
② 意識状態が明らかに悪いか悪化するもの
こういった場合には特に注意が必要です。
では、実際に異常言動・行動とはどういったものなのでしょうか?
① 両親がわからない、いない人がいると言う(人を正しく認識できない)
② 自分の手を噛むなど、食べ物と食べ物でないものとを区別できない
③ アニメのキャラクター・象・ライオンなどが見える、など幻視・幻覚的訴えをする
④ 意味不明な言葉を発する、ろれつがまわらない。
⑤ おびえ、恐怖、恐怖感の訴え・表情 ⑥ 急に怒りだす、泣き出す、大声で歌いだす
このような症状が確認されています。
他にも、厚生労働省からは、以下のような症状が出ています。
A.事故につながったり、他人に危害を与えたりする可能性がある異常な行動
A1 事故につながる可能性がある異常な行動
例:自分が知らないうちに、靴をはいて外にでていた。外に飛び出し、小川に飛び込もうと した。高いところから、飛び降りようとした。
A2 他人に危害を与える可能性がある異常な行動
例:夜間に母親を包丁をもって襲おうとした。
A3 上記以外で事故につながったり、他人に危害を与えたりする可能性がある異常行動
B.幻視・幻覚・感覚の混乱
B1 存在しないものが見えている様子
例:ついていないテレビを見て「猫が来る」,「お花畑がみえる」。
B2 居るはずがない家族や親戚、友人、知人などがいると言う。
B3 目の前にあるものが見えない様子
例:そばにいるのに「ママ近くに来て。」と話す。
B4 よく知っている人を間違える。
例:父親を「お姉ちゃん」という。
B5 身体の感覚が正しく認識できない。
例:突然「回る回るよ」と叫ぶ。
B6 自分のいる状況が把握できない。
例:病院に行く準備をしているときに公園に行くと言う。
B7 上記以外で幻視・幻覚・感覚の混乱と思われるもの
C.うわごと・歌を唄う・無意味な動き
C1 状況に全くそぐわない言葉を言う。
例:知っている単語を意味なく繰り返す。
C2 普段と違う不自然な話し方をする。
例:大人の敬語を使い「~でございます」という。
C3 話す内容がばらばらで、筋道が通った話や会話ができない。
C4 話そうとするが言葉が出ない。
例:お母さんと言えず「あーうー」と奇声を上げる。
C5 大声で叫ぶ、奇声をあげる。
C6 突然歌を唄う。おかしな歌の唄い方をする。
C7 無意味な動きをする。
例:舌を何度も出す、おかしなしぐさを繰りかえす。
C8 上記以外でうわごと・歌を唄う・無意味な動きと思われるもの
D.おびえ・恐怖・怒る・泣き出す・笑う・無表情・無反応
D1 理由も無くおびえる。
例:「こわい」と叫ぶ。
D2 何でもないものにおびえる。
例:窓ガラスに映るものやささいなものに怯える。
D3 異常に怖がる。
例:医師や看護師、知らない人をこわがる。ひきこもり、怖そうにがたがた震える。
D4 理由もなく泣く、泣き叫ぶ、泣きわめく。
D5 理由もなく怒る、暴れる。
例:押さえ切れないほどの力で暴れる。
D6 理由もなく笑う、ニヤリと笑う、高笑い。
例:甲高い声でわめきだす。
D7 無表情、無反応。
例:喜怒哀楽の表情がない。反応が鈍い。視点が定まらない。
D8 上記以外でおびえ、怒る、無表情などと思われるもの
E.何でも口に入れてしまう。
E1 何でも口にいれてしまう。
例:自分の指を、「ハムだ」と言いかじる。点滴の添え木をしゃぶる。
E2 上記以外で何でも口に入れてしまうような異常行動